
フェアの全体テーマは「ビジネス変革の鍵 ~DX実践とこれからのAI活用~」
様々な業種や分野で業務変革に取り組む企業の最新事例、DXの実現方法、最新ソリューションの紹介など、幅広いセミナーや展示を通じてリアルな体験をお届けしているイベントです。
本セミナーは、株式会社内田洋行が主催する「UCHIDA ビジネスITフェア2025」内で開催されました。同フェアは、東京会場(2025年10月24日(金) 明治記念館)と大阪会場(2025年10月30日(木) グランフロント大阪)で開催され、様々な業種や分野で業務変革に取り組む企業の最新事例、DXの実現方法、最新ソリューションを紹介し、リアルな体験を提供する場となりました。
ユーザックシステム株式会社(以下、ユーザックシステム)は、この展示会において、本セミナーで紹介された「Knowfa 受注AIエージェント」や「Autoジョブ名人 / EOS名人」といった、受注業務のDXを実現するソリューションを展示しております。
目次
本セッションの概要
タイトルは、「フライスターの挑戦に学ぶ、AIエージェント活用による受注業務の革新と完全自動化への道のり」です。
登壇者は、パン粉業界のリーディングカンパニーであるフライスター株式会社(以下、フライスター) 営業部 業務課 課長である都丸 寿雄氏と、受注AIエージェント「Knowfa」を提供するユーザックシステム株式会社 代表取締役社長の小ノ島 尚博です。
50分間のセミナーでは、AIエージェントを活用した受注業務の革新と完全自動化の道のりについて、その背景や、実際の導入における苦労話などが共有されました。特に、属人的でミスが発生する恐れがあった従来の受注業務に対し、AIとRPAを組み合わせた「受注AIエージェント」を導入することで、完全自動化に挑むフライスターの実例を通じて、業務革新のヒントと未来像を学ぶことが目的でした。
フライスターの受注業務の課題
創業78年を迎えるフライスター株式会社は、パン粉業界のリーディングカンパニーとして「食感」にこだわってきました。しかし、人手不足や採用難に直面する中で、受注業務の完全自動化は、顧客対応だけでなく、経営面においても重要なテーマとなっています。
当時の受注件数は合計で月15,000件(日750件)月9,500件がFAXによる注文でした(取引先は主に食品卸問屋)。

従来の受注業務が抱えていた主な課題は以下の通りです。
- ・入力ミスの心配:受注業務におけるミスの発生リスク。
- ・属人化と知識の維持:熟練した知識や経験が必要であり、人員変動があった場合に入力品質を維持することが困難。
- ・処理時間の制約:当日受注・当日出荷など、処理時間がタイトな業務が存在。
- ・人員確保の必要性:最大値での人員確保が必要。
- ・作業者の負担:作業者が自由に休みを取りにくい状況。
また、FAXやメールで届く注文書には、得意先名が記載されていない場合や、納品先から直接注文が来るケースもあり、得意先を特定できないという問題がありました。さらに、商品名も「パン粉180g」のように簡略化されていることがあり、そのまま文字情報に置き換えただけでは、基幹システムの情報として取り込めないという課題がありました。
Knowfaの導入背景
フライスターは、受注業務の改善のためにこれまで段階的な取り組みを進めてきました。
1. STEP1: 特定得意先との専用EDI開発、電話取次業務の削減、Teamsチャットの活用。
2. STEP2: EDI比率増加に加え、RPAツール「Autoジョブ名人」を導入。RPAの導入により、手入力の削減(FAX注文の一部自動入力やチェック時間の削減)、入力ミスの削減、従業員の負担軽減といった効果を上げていました。

しかし、RPAを導入しても解決できない課題が残りました。特に、FAXからEDIへの切り替え交渉の難しさや、EDI契約をしていない納品先から注文FAXが届くため、完全なEDI化が実現できない点が大きな障壁でした。納品先からの注文FAXは、得意先側もデータを保有していないため、手入力が必須でした。
こうしたRPAだけでは解決できない課題が残る中で、「手入力受注“ゼロ”」を目指し、人が判断しなければならないイレギュラーな業務にも対応できる次世代のソリューションとして、「Knowfa 受注AIエージェント」の採用を検討するに至りました。


Knowfaを導入した効果
Knowfa 受注AIエージェントは、RPAツールである「Autoジョブ名人」と組み合わせて活用されています。
- ・高い文字認識精度: 初見の注文書でも、ほとんどを文字化でき、文字の誤認はほとんどないという高精度に驚いたと都丸氏は述べています。一般的なOCRエンジンが約95%の精度であったのに対し、Knowfaはその後のAI補正機能によってさらに精度を高めています。
- ・人手を介さない完全自動化の実現: RPAとKnowfaの連携により、基幹システムへのデータ入力までを人の手を介さずに完全自動化することが可能になりました。
- ・業務工数の削減: 処理結果の確認・修正画面が用意されていますが、このチェック時間を含めても、トータルでの業務工数が削減されました。
- ・熟練者のノウハウの継承: 過去の受注データや商品マスターを参照することで、文字化された情報だけでは判断が難しい得意先や商品名を特定し、正確な商品コードを持ってくることができるようになりました。これは熟練者が持っていた「このお客さんにはこれがいく」というノウハウをAIが代替している部分にあたります。
- ・意識改革と将来への備え: 「20年間変えられなかった」手入力業務が変わるという実感を現場スタッフが持てたことは非常に大きい成果です。Knowfaは、人手不足や世代交代における知識継承の困難といった将来的な課題に備える上で、重要な基盤となります。また、売上が増加しても受注入力にかかるコストを上げずに済むようになります。

Knowfaの特徴
Knowfa 受注AIエージェントは、生成AIを用いることで、これまでシステム化が難しかったイレギュラーな対応や、人が判断すべき業務を自動化する次世代のソリューションです。
Knowfaは、人間の業務を「人の目」「人の頭脳」「人の手」の3つのステップに分けて処理します。

1. 人の目(生成AI-OCRによる受注情報解析):
◦ FAXやPDFで送られてきた注文書情報をAIで文字化します。
◦ 生成AI-OCRを使用しているため、フォーマット登録や項目定義が不要です。
2. 人の頭脳(AIによる受注情報補正):
◦ 文字化された注文書の情報を理解し、基幹システムに必要なデータに補正します。
◦ マスターデータ(得意先マスター、商品マスター)や過去の受注データと連携し、得意先コードの特定や、略称で書かれた商品名(例:リンゴジュース10)を正式な商品コードや商品名に変換します。
◦ 得意先別の個別ルールを設定できます。例えば、「この得意先からの注文なら納期をプラス1日する」といった個別設定や、注文書に記載されたケースとバラ数のうち、ケースの欄の数値のみを読み込むといった具体的な指示が可能です。
◦ 初期の検証では、AIが指示と異なる数値を返してきた際に、プロンプトの書き方(日本語での指示)を工夫することで、望む数値を正確に持ってくるように教育することができました。
3. 人の手(指定フォーマットへの変換):
◦ 補正されたデータを、基幹システムに取り込み可能なファイルレイアウトに変換します。
◦ 基幹システム側のレコードの並びを設定するだけで、簡単に変換して取り込み可能となります。
Knowfaはクラウドサービスとして提供されており、FAXデータをアップロードすることで、得意先判定、データ取得、得意先別ルール適用、AI再評価、承認・修正を経てCSV出力を行うという流れで処理が実行されます。

フライスターのAIエージェント導入への道のりは、IT部門を持たない企業が、最新技術をいかに組織に浸透させるかという点で多くの示唆を与えてくれました。
また、経営者が新しいことへの挑戦を奨励するという社風があり、AI利用が進みやすい環境がありました。しかし、導入においては、トップダウンではなく現場から自然発生的に上がってきた取り組みを重視し、急激な変更を避ける工夫がなされました。
長年手入力を行ってきた熟練者にとって、手入力のスピードは未だ早いため、「時間をかけて、これが良いものだ」と実感してもらうために、得意先を絞り、段階的に導入を進めています。この運用方法により、現場の抵抗感を抑えつつ、システムの能力を高め、熟練者のノウハウをITへ落とし込むための時間を確保しています。
都丸氏は、この取り組みを通じて、「変えられない常識的に無理だと思っていたものが、実は変えられるんだ」という大きな気づきを得たと仰っています。
今後は、働き方改革や人手不足に対応するため、受注業務だけでなく他のバックオフィス業務にもAI活用を拡大し、販売や製造といったコア業務に資源を集中させていきたいとの展望を語りました。
ユーザックシステムの小ノ島も、AIエージェントやAIの活用は全ての企業で使われる時代が間もなく到来すると述べ、フライスターの事例を参考に、少しずつでもDXに取り組むことの重要性を強調しました。
各社概要
フライスター株式会社
本社:横浜市港北区新横浜3-6-1 新横浜SRビル7F
代表者:代表取締役社長 関 全男
1947年創立。パン粉は余ったパンを粉にしているのでなく、パン粉専用のパンを焼くところから始まります。フライスターは食感カンパニーとして食感にこだわりながらパン粉を作る技術を磨き続け、主力商品である『フライスターセブン』は家庭用乾燥パン粉販売量1位、『専門店仕様の生パン粉』は家庭用生パン粉販売量1位を誇り、常にお客様のことを一番に考えた商品作りを行っています。また、日々の衛生管理と徹底した安全対策を実施し、お客様に安心してご利用いただける製品を提供しています。
https://www.frystar.co.jp/
ユーザックシステム株式会社
本社:大阪市中央区瓦町1-6-10 JPビル3F
代表者:代表取締役社長 小ノ島 尚博
1971年創業。お客様の業務課題を解決するノウハウとシステムをパッケージソフト化した「名人シリーズ」を提供。RPA、EDI、物流・帳票分野において、コストパフォーマンスに優れ、短期間で安心して導入でき、基幹システムとの連携もしやすいアプリケーションを開発し続けています。
https://www.usknet.com
関連情報
・Knowfa 受注AIエージェント
https://knowfa.jp/
・フライスターの受注業務、『受注AIエージェント』で93.6%以上の精度で自動化に成功https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000204.000012889.html